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交通まちづくりと交通シミュレーションの技術をご紹介します

効果的な活用例Examples

交通シミュレーションを使えば、複雑な渋滞現象もありのまま再現できます。
ここでは、この再現力を使って、通常の方法では難しい、渋滞原因の特定や対策の効果予測を行った事例を紹介します。

10.渋滞対策の検討

  • 交差点Aでは、ピーク時を中心に渋滞が慢性化しています。混雑度や交差点需要率に問題はないので、需給バランス以外の原因が疑われます。
  • そこで、二つの原因を仮定し、対策を想定しました。
  • この仮定は正しいのか、想定した対策は有効なのか、交通シミュレーションを使って検証します。

現況再現(渋滞原因を特定する)

  • 交通シミュレーションを使って渋滞現象を再現すると、渋滞が発生し成長していく様子が観察できます。事例の場合は、交差点Aで、西側流入部の車両が左折や直進を妨げられて渋滞が始まる様子が観察できます。前方に目を移すと、左折は北側流出部の横断歩行者によって、直進は東側流出部付近まで達した滞留車によって、阻まれている様子が観察できます。

  • 観察を通じて、このケースの渋滞原因は、横断歩行者や流出部の滞留車両による先詰まりだとわかります。このように、交通シミュレーションを使うと、複雑な交通現象をコンピュータ上に再現できます。
  • 一度再現してしまえば、見たい場所や時刻を自由に選んで繰り返し観察できます。複合的な要因が絡み合う複雑な渋滞現象を解明するのに便利なツールです。

検討ケース(対策の有効性を検証する)

  • 原因が分かったので、次に対策を検討します。左折車が滞留するのは横断歩道が原因です。横断歩道を無くすわけにもいかないので、たとえ停止しても後続の直進車の邪魔にならないように、滞留スペースを拡張する方法を考えました。
  • 滞留スペースが不足すると左折車が溢れて直進を妨害します。一方、滞留スペースを過剰に造るのは不経済です。交通シミュレーションを利用すると、左折車の滞留や直進を妨害する様子もコンピュータ上に再現し、観察できます。
  • 事例のケースでは、最大3台の左折車の滞留が観察できました。一方、直進を妨害せずに左折車が滞留できるスペースが現状でも2台分あります。したがって、最大の需要に対して、1台分の滞留スペースが不足していることが分ります。

  • 次に、東側流出部の先詰まり解消策について考えます。交通シミュレーションによる再現結果を観察し、東側流出部にまで車両が滞留する原因が、前方の交差点との間隔が短く滞留スペースが不足しているためであることが分りました。
  • 前方の交差点の信号が赤点灯の間、到着する車両は交差点間に滞留します。交差点間隔が短いと滞留スペースの収容台数も小さくなるので、先詰まりを起こしやすくなります。
  • そこで、交差点間の車線を増設し、滞留スペースを拡張することにしました。そして、この変更を現況モデルに加えて予測シミュレーションを行い、対策によって滞留長が短縮し、先詰まりが解消されることを確認しました。

結果の活用(事業の合理性を評価する)

  • 最後に、この対策を事業として実施することの合理性を検討します。判断は、通常、事業実施による便益を費用で除した費用便益比(B/C)を使って行います。
  • 便益算定の結果に最も影響を及ぼすのは、走行時間(短縮量)です。
    交通シミュレーションを使うと、これを合理的に求めることができます。
  • 事例では、現況の混雑度や交差点需要率に問題はありません。すなわち、通常の方法では渋滞の影響を加味せず、実際より短めに走行時間が推計されます。
  • 一方、交通シミュレーションでは、渋滞の影響を加味して、実測に近い走行時間を推計することができます。

  • このように、需給バランス以外の原因で起こる先詰まり等の渋滞対策を評価する場合、交通シミュレーションの利用をお薦めします。

賢い使い方の工夫(その1 交通シミュレーションデータ収集の効率化)

  • 交通シミュレーションを利用する場合、交通量の他、道路構造や信号・交通運用に係るデータ、再現性チェック用のデータ等が必要です。これらのデータ収集にかける費用や時間は、工夫次第で効率化できます。その事例を紹介します。
  • 事例では、既往調査結果等を最大限活用し、追加調査の規模を縮小しました。例えば、調査時間帯は既往調査をもとに渋滞が激しい曜日や時間帯を特定し、休日の夕方1時間に絞り込みました。
  • さらに、既往調査をもとに渋滞原因を想定し、追加調査項目を絞り込ました。例えば、「合流後の左折と直進の織り込み」という原因を検証するのに、交差点Aで経路別の交通量と左折を妨げる横断歩行者交通量を計測しました。
  • また、再現性チェック用に、ビデオ撮影と滞留長を調査しました。ビデオ撮影では、特定の車両を追跡し、後日再生して交差点通過時間を算出する工夫も行いました。
  • 以上の工夫によって、追加調査の規模を5人×1時間(準備や片づけを含まない)の縮小及び内製化が可能になりました。

  • これまでの実績では、追加調査の規模を縮小しても、推計交通量と実測値の差を概ね5%以内に収め、また、滞留長や交差点通過時間も1回限りの実測でも、交通シミュレーションで再現することができています。

賢い使い方の工夫(その2 交通量データの効率的整備)

  • 交通シミュレーションが持つ「時間の推移に伴う変動を表現する機能」を活かして交通現象を忠実に再現するには、少なくとも10分間程度のピッチで交通量を準備する必要があります。一方、通常の交通量調査は1時間ピッチですから、そのまま利用することはできません。ここでは、この問題を克服し、効率的に交通量データを整備した事例を紹介します。
  • 事例では、既往調査結果を最大限活用し、追加調査を交差点Aのピーク時に絞り込みました。そして、交通シミュレーションに必要な他の交差点の交通量は、追加調査と既往調査の結果を使って推計しました。
  • 推計に使った方法は、基本的に弊社が実測値を使ってシミュレーションデータの交通量を推計する場合に使っているのと同様の方法です。詳しくは、交通量データ作成法(youtube)をご覧ください。
  • この方法は、複数の地点で得られている実測値との差をできるだけ小さくなるように調整するものです。実績では、推計交通量と実測値の差を2%(最大でも5%)以内に収めています。

  • このように、事例では、渋滞原因の解明に特に重要と考えられる交差点Aの交通量は実測し、関連するその他の地点の交通量は実測結果や既往調査結果と整合するように推計することで、交通量調査の規模を大幅に縮小することができました。
  • もう一点の工夫は、感度分析を行い交通量が想定を上回った場合の対策の妥当性を検証したことです。交通量は日々変動します。実測値と推計値の差は精々5%ですが、交通量はそれ以上に変動する場合があるからです。



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