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交通まちづくりと交通シミュレーションの技術をご紹介します

再現可能な交通現象の例Examples

3.大規模駐車場の出入交通による影響

  • 休日になると、大型店等の周辺で、駐車場待ちをする車の行列を見かけることがあります。ひどい時には、行列が車線を塞ぎ交通渋滞に発展することもあります。
  • こんなことにならないように、大型商業施設等の新規立地の際に、周辺への影響を評価し、問題があれば是正措置を指導することが大店立地法で規定されています。
  • それにもかかわらず、冒頭に述べた問題が起こるのは何故でしょう。今回は、下図の大規模商業施設の例を使って、駐車場の出入交通の影響について考えます。

      

出入口の運用による影響の違い

  • 上の図をご覧ください。駐車場の出入口の前面道路中央にはゼブラの路面標示があります。交差点に近いので導流のため設けられています。
  • ゼブラによって、駐車場の出入も制約を受けます。センターラインを越えて、駐車場に右折で入ったり、駐車場から右折で出たりすることができなくなるからです。
  • しかし、それでは不便なので中にはゼブラを無視して駐車場に出入する車も実際には出てきます。下は、右折IN・OUTを考慮した場合のシミュレーションです。

    右折IN・OUTを認める場合    


  • 動画には、走行車両の間隙をついて駐車場から車が出ていくシーンや駐車場に入ろうとして、ゼブラ上に車が並ぶシーンが出てきます。
  • このケースは幸いうまく捌けていますが、もっと交通量が増えたらどうでしょう。駐車場の出入ができなくなり、入場待ちの車列が車線を塞ぎ渋滞を起こします。
  • それでは、次に、右折IN、OUTの禁止を徹底し、左折IN・OUTしか認めなければどうなるでしょう。下のシミュレーションをご覧ください。


    左折IN・OUTしか認めない場合


  • 今度は、駐車場出入口の取り付け道路を含む施設の外周道路の交通量が多くなり、車列ができやすくなりました。渋滞に発展しそうな瞬間も見られます。
  • これは、右折IN・OUTできなくなった車が、施設の外周道路を迂回するようになったからです。
  • このように、駐車場出入口の運用を変えるだけで、周辺道路への影響も違ってきます。影響評価では、色んなケースを想定して検証してみることが必要です。

正しい推計は交通現象の忠実な再現から

  • 事例の駐車場では、入庫時に1台当り10秒のサービス時間が必要とすると、前の車との間隔が10秒未満で到着した車に待ち時間が発生します。
  • 一方、待たずに入庫できる車の最大数は、すべての車が10秒間隔で到着する場合ですから、10分間に60台ということになります。
  • この駐車場の到着台数は、下のグラフの通りです。10分間でみると平均約50台、最大でも60台ですから、いずれも待たずに入庫できる最大値の60台を下回ります。


  • 交通シミュレーションを使って、スムーズに入庫できるか確かめてみます。まず、10分間交通量として平均値を与え、等間隔で車両を発生させた場合です。
  • 入庫待ちの車が前面道路にまで連なることもありますが、前面道路の車の流れを妨げ、渋滞に発展することはありません。
  • この様に、交通量の変動が小さければ駐車場待ちも抑えられ、周辺道路への影響は軽微と判断しても差し支えない結果を得やすくなります。

    交通量の変動が小さい場合
  • 次に、交通量が変動する場合のシミュレーションです。10分間交通量として観測値を与え、さらに、車両発生間隔に指数分布に従うランダムな変動を加えています。
  • 時間交通量は同じでも変動が大きくなると、前面道路にまで入庫待ちの車列が伸び、渋滞が発生し易くなっていることがわかります。
  • この様に、交通量が変動すると短時間の需要超過による渋滞の頻度が増加します。その結果、周辺道路への影響は大き目に出やすくなります。

    交通量の変動が大きい場合
  • この様に、交通量の時間変動を忠実に再現しないと、交通現象を正しく再現することも、予測することもできない場合があります。
  • 交通シミュレーションの適用にあたって、交通現象の変動を忠実に再現するモデルか否かを十分検証することが肝要です。

周辺道路に対する影響評価

  • 施設が立地すれば、交通量が増加し周辺道路への影響が避けられません。それでは、影響の是非を判断する場合、評価基準をどこに置けばいいのでしょうか。
  • ここでは、従前からの道路利用者の利便性を低下させるか否かという点を基準に、周辺道路に対する影響を評価する方法を紹介します。
  • 下のグラフは、施設利用者と従前利用者に分けて、走行台`と走行台時を集計したものです。走行台`は車の走行距離の総和、走行台時は車の走行時間の総和です。


  • 従前利用者は、迂回による距離の増加や渋滞による時間の増加を強いられます。これらの影響を、走行台`と走行台時の2つの指標で捉え、利便性を評価します。
  • この事例では、従前利用者の走行台`、走行台時とも、整備前後で変化が認められませんので、影響は軽微であると評価できます。
  • 現状では、敷地内の対策が可能な範囲の評価に主眼が置かれています。想定外の問題を起こすことのないよう、周辺道路を含めた影響評価と対策が望まれます。

道路改良等の対策のコスト負担

  • 周辺道路を含めた影響評価と対策で問題になるのは負担の公平性です。現状では、先行開発者の方がバックグランドの(現況)交通量が少ないためです。
  • 同じ増加交通量の場合でも、バックグランドの交通量が多いほど渋滞等の問題が起こりやすくなります。
  • この様な不公平を避けるには、現状の様な開発ごとの個別評価を、すべてを同じ土俵で評価するように改めるしかありません。
  • 例えば、計画交通量をバックグランドとし、その想定を上回る開発のみ周辺道路の影響評価の対象にします。
  • 対象の開発について、バックグランドの交通に与える影響を、ここで紹介したような客観的な指標を用いて評価し、増嵩分に見合う対策コストを負担する訳です。
  • 以上で、今回はおしまいです。最後まで、ご覧いただきありがとうございました。


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